やわらかであたたかいおすすめ度
★★★★★
青木玉と祖父幸田露伴、母幸田文との着物にまつわる随筆。
露伴については筆者はおぼろな思い出が多く、母から伝え聞いたものや、母による祖父の着物の納まりを書いたものが多い。この着物の納まりとは、着物を誂え着物が年をとってゆく末のことで、仕立てなおしたり、最後のほうは座布団になったりすることである。露伴の着物が座布団になり、それを座ってから知らされた客の尻の納まりが悪いなんてくだりはおかしい。そりゃそうだろうなと思う。
祖父や母へのやわらかであたたかな思いが感じられ、その文章に触れているとこちらもおだやかでゆたかな気持ちになる。
着物の話ばかりで着物好きの私は着物初心者ながら興味津々で楽しめたが、着物どっぷりの人はもっと楽しめるのではないだろうか。反対に着物に興味のない人にはなにがなにやら?かもしれない。しかしやわらかな筆致から当時の風景が垣間見られ、着物に興味のない人でも楽しめる・・・・と思う。
文章からどんな着物なのだろう?と想像をめぐらしていると、ふっとその着物の写真や、当時の写真がはさまれる。消化不良にならないところもいい。
幸田文の文章を読んだことがなかったのだが、強くあたたかくやさしい母の文の文章も読んでみたいと思った。
眼福ですおすすめ度
★★★★☆
著者 青木玉の母は幸田文、祖父は幸田露伴。
二人の遺した着物とそれにまつわる思い出話を綴った本です。
文庫本だけれど美しい写真が多く、着物を見せてもらいながら話を聞いているような贅沢な気分が味わえます。写真が多く着物用語の簡単な説明もあるので着物を知らない人でもわかります。幸田文の読者で着物に詳しい人ならすごく楽しめるのは確かです。
思い出の中の幸田文は、やんちゃな所のあるお母さんかな。
幸田文の小説のイメージから縞柄、格子柄はぴったりという気がするのですが、無地の綸子や優しい植物柄の刺繍の加賀紋には正直少し意外な感じがしました。あと江戸小紋が出てこないのも。
30代の頃の日本刺繍の作品(花柄の半襟)、綺麗で必見です。
そして彼女の友禅のお布団。着物ではあまり着ることのなかったという花柄。こんな素敵な布地の夜具を楽しんでいたなんて、とてもオシャレでゴージャス!です。
本を開くと着物や生活の様々な思い出話を通じて、著者と母そして周りにあった密度の濃いしっとりとした時間がこちらにも流れてきそうな感じがします。
着物、夜具、晩年の出来事などを、ここまで書けるのは長年身近で過ごして来た女性の家族だから。
幸田文に著者のような家族が居らして、読者の一人として幸せを感じます。
蘇る思い出おすすめ度
★★★★★
著者のお母様である幸田文さんの講演を一度だけ伺ったことがある。
階段教室で「おとうと」の映画を見た後に、ただ一学年だけ、400名弱の贅沢な空間での講演だった。闊達な江戸言葉に圧倒されたものの、その時のお着物は地味な縞模様で、着物も何も知らない私には、「地味~なおばさん」にしか見えなかった。
自分がいま、あの頃の幸田文さんと同じような年になり、着物にも興味を持ち始めもして、もしあの時の戻れたら、おそらくあれは大島で、あんなに粋に、肩肘張らずに着物を着こなす素晴らしさに、まず感嘆したものを…と思う。
凛としたあの空気は彼女の生き方そのものだったのだと、娘、玉さんの筆によって改めて思い知ることのできる、この本は私にとって貴重な一冊となった。
すばらしい
おすすめ度 ★★★★★
出来は非常に良いです。ファンなら買って間違いなく損のない品ですね。
感動やドキドキ感を手元に置いて、私同様に何時でも手に取って思い返して頂きたいと願います。