とうとう購入してまた見直してみました。DVDの英語字幕機能のおかげでより正確に会話の陰影を理解することができます。でも思った以上に欠点が目に付きます。やはりスーイン役を白人の女性に演じさせるのは無理がありました。そして小説の文字をそのまま主人公にしゃべらせたためでしょうか、マークとスーインの間の会話が異様にぶつ切りで、かたくなってしまっている部分が散見されます。もっともこれは原作がすばらしい英語で書かれており、そのまま取り出したくなる名文句が数多くあるためしょうがなかったのでしょう。欠点を補ってあるのはやはり1950年代半ばの香港の風景です(小説の舞台自体は1949−1950年)。わずか10年後の1966年にはもう東洋のマンハッタンと呼ばれるほどに変貌していまう前の、まだ高層ビルが多数建てられる直前の時期です。そして車はフェリーで九龍と香港島の間を渡ります。そして画面でもかなり忠実に再現されているのは香港の微妙な社会階層です。上位を占めるイギリス人、そして香港に逃げ出してくる中国人、中国に戻るインテリの中国人、そしてその間を遊泳しなければならないユーラシアンたちの姿がさまざまなシーンの中で克明に描かれています。その中で中国と香港の双方に足をかけながらも生きていくスーインの生き様がその葛藤を含めて描写されます。最後のシーンは小説もすばらしいものですが、映像も負けずとも劣りません。ところで著者のスーインのその後もこの作品とは別な次元ですさまじいものです。
慕情おすすめ度
★★★★★
永遠の主題歌に乗せて、恋の素晴しさを謳い上げた「永遠のラブ・ストーリー」
Love Is A Many Splendored Thing (慕情) FXBQA-1039
(20世紀 フォックス ホームエンターテインメント ジャパン株式会社より発売)
今回、16:9で、オリジナル映像から収録、非常に高画質が保たれたDVDがリリースされた。本編102分、全くオリジナルに勝るとも劣らない画質で楽しく鑑賞ができるので、とても気に入った。
ストーリーは、1949年の香港が舞台で、或る上流社会のパーティーで偶然知り合った妻のあるアメリカ人ジャーナリスト・マーク・エリオット(ウィリアム・ホールデン)と恋に陥った若き美人ウィドウ、ハン・スーイン(中国人と英国人とのハーフで香港の病院勤務の女医)(ジェニファー・ジョーンズ)。二人は、ハンディキャップを乗り越えて結婚を約束する。しかし、マークに緊急指令が下り、独り従軍記者として朝鮮戦争の戦場に向かう。出発前に二人は、香港に戻ったら、病院の裏の丘で必ず会うと言う約束であったが、
間もなく、新聞が、マークの戦死を報じた。逢瀬を重ねた思い出の丘に立ち、返らぬ愛しの彼を待つハンの姿は、永遠に涙を誘う。戦後生まれの紳士淑女には、中華民国・蒋介石軍と中国共産軍との不穏な関係を垣間見るよき材料とも言えるし、戦前生まれの人々にとっては、戦争が如何に罪悪なものかを改めて思い知るよきメディアである。1955年度アカデミー賞3部門受賞(音楽賞・主題歌賞・衣装デザイン賞)。尚、この映画のロケに用いられた海辺は、香港島の南に位置する一等地、リパルス・ベイである。筆者の大好きな映画の一つだ。「慕情」を観ずしてホンコンを語る勿れ。筆者・大橋新也
究極の愛とアイデンティティーおすすめ度
★★★★★
私が最も好きな恋愛映画の一つです。この作品とカサブランカは、個人的にも愛する人への想いが重なる作品です。さて、慕情ですが、あと一歩で成就するはずの恋が、従軍記者の恋人の死によって、報われないものとなります。そのはかなさが胸を打ちます。そして、そのはかなさが、主題歌のメロディーを引き立てるものと思います。もうひとつのテーマ、主人公のハン・スーインさんのアイデンティティーの問題を取り上げている点です。ヨーロッパの個人主義と中国人としてのアイデンティティーとの狭間にわが身を翻弄される日々の葛藤。この作品の二大テーマに私は強く惹かれています。
出来は非常に良いです。
おすすめ度 ★★★★★
まさに夢のコラボです
。ファンなら買って間違いなく損のない品ですね。
感動やドキドキ感を手元に置いて、私同様に何時でも手に取って思い返して頂きたいと願います。
概要
中国とイギリスのハーフである女医ハン・スーインの自伝的小説を映画化したラブストーリー。夫が共産軍との戦いで戦死して以来、香港の病院で働いているスーイン(ジェニファー・ジョーンズ)は、あるパーティでアメリカ人新聞記者マーク(ウィリアム・ホールデン)と出会い、やがて恋に落ちていく。しかしマークには、既に冷えきっているにも拘わらず離婚しようとしない妻がいた…。
いわゆる典型的メロドラマだが、香港の風景をバックに甘美な主題曲(今や映画音楽のスタンダード・ナンバー)とともに繰り広げられる美しいラブシーンの数々に当時の観客は酔いしれ、今なお語り継がれる名作として讃えられるようになった。ジェニファー・ジョーンズの名演が、映画ならではの麗しきヒロインの心情をさらに悲しく際立たせている。(的田也寸志)