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高熱隧道 (新潮文庫)

吉村 昭
おすすめ度:★★★★★
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「記録文学」とは
おすすめ度 ★★★★★

「史実」を題材とした小説は数多くあるのに、著者の小説が「記録文学」と呼ばれるのは何故だろう。個人的には、それには4つの理由があると思っている。

一点目は、その作品からフィクション的な要素を取り除いた「史実」の部分もノンフィクション作品として一級品であること。

二点目はその作品が史実を題材とした単なる人間ドラマとなっているのではなく、史実と人間が同じ価値を持って描かれていること。

三点目は、作品に登場する人間も、著者の取材と調査によって得たものからその個性が形作られた“普通”の人物であること。

そして四点目は、著者の抑制の効いた文体である。

犠牲者300余名を数えた黒部第三発電所の隋道工事。トンネル貫通にとり憑かれた男たちの執念と、それを嘲笑うかのような自然の猛威を描いたこの作品は、描きようによってはプロジェクトX的世界になるのだが、さすが吉村昭である。そうはならない。この難工事を一面から捉えることはしない。工事の歴史的背景にまで目を配るのは勿論、それに関わった人物(機関)それぞれの視点からこの工事を描き出している。

トンネル貫通の情熱にとり憑かれたのは、現場を監督する土木技術者たちも、実際にトンネルを掘る人夫達も同じなのだが、同じ意味の情熱を持っていたわけではないのは明らかだ。著者はその違いをラストシーンで見事に描き出している。この作品は、まさに記録「文学」である。

著者は79歳で鬼籍に入ってしまった。非常に惜しまれるが、作家としては幸せな生涯だったに違いない。



やり遂げる執念のすごさ
おすすめ度 ★★★★★

本書は、黒部発電所を作るための隧道(トンネル)工事で、何が起こったのかを詳細に記述したドキュメントです。
雪深い黒部でのトンネル工事で、内部温度が160度という信じられない状況に目を疑います。そこで発生する事故による死者の山。
それでも黙々と、完成まで陣頭指揮をする主人公。
昭和の男達の熱さと、持たざる者の悲哀が縦糸と横糸になって物語が進行して行く筆致に圧倒されました。



映像化できない調べた小説
おすすめ度 ★★★★★

 吉村昭氏の小説で感銘を受けたものの1つが「白い航跡」であった。かの小説では、明治時代の実在する医師の物語であったし、評定のあるように記述文学の話も頭にあったことから、小説の登場人物は実在するものと考えており、その通りだった。
 この「高熱隧道」においても、読み進んでいったところすべてが本当のところと思い込んだのだが、それはあとがきで裏切られる。状況や心情など、細かい取材があって作り出される現実の描写とそれによって生まれる小説の様は見事。<調べた小説>として解説がされている。
他のReviewerが述べているように、この小説は黒部第三発電所の物語である。プロジェクトXや「黒部の太陽」で話題になっている黒部ダム第四発電所の物語ではない。大きな違いを述べておきたい。

1.第三発電所建設時期は、日中戦争時、太平洋戦争の直前の昭和11年〜15年である。物資が戦争にあてられる時代。御国への献身と、軍事産業の発展のため国のために発電所が必要とされた。この本では、安全に関する法律の施行よりも、高い賃金を払い仕事を優先させられる様が描かれている。命の保障もなく。
 黒部ダム(第四発電所)建設は戦後の1956年。時代背景が全く異なる。
2.殉職者数が異なる。
 第四発電所の建設工事では180人あまりである。
第三発電所の建設工事では300人を超えているとされている。
3.工事と自然に対する知識が異なる。
 他のReviewerが述べているように、自然の驚異が描かれている。この本に記述された前例として引用されているのが、オーストリアの自然現象。村が掻き消されたらしい。そうしたことが起こる可能性すら疑えなかった第三発電所の建設工事時代。黒部ダム建設時代とは異なっているし、第三発電所の建設工事の知的産物が第四発電所の建設工事に生かされたことは確かだろう。
 また、高熱隧道工事におけるダイナマイトの使用に関しても、工夫から新規の手法が生まれる様が描かれている。第四発電所建設工事の詳細は知らないが、技術的な差があり、それに伴い危険の差もあったことと思う。

プロジェクトXのものよりも印象的なドラマが作れると考えられるが、
なぜそれがされないのか・・・?
理由として:
・戦前で情報が限られている(小説はそうは思わせないが・・・)
・自然現象が凄まじ過ぎるので描写できないこと
・爆死する様や、仕事人の狂気というのが絵にならないこと
があげられる。
戦時中の仕事・自然の驚異というのはこういうものだったのか知らしめられる。
読む価値の高い本。



すさまじい事実
おすすめ度 ★★★★☆

黒四ダムを訪れ、ダム工事の過酷さを始めて知ることになりました。
「黒部の太陽」(映画)を見たくなり、ビデオ屋さんを探しまくったのですが、
結局ネットで、出回っていないことを知りました。

その後、プロジェクトXのビデオと「黒部の太陽」(小説)黒四建設の過酷さを
知ることになったのですが、これを超えるのが、黒三建設を描いたこの「高熱隧道」
でした。

なぜ、こんな凄まじい事実があったことを日本人に余り知らされていないのだろう。。
という疑念でいっぱいになりました。
山・雪・水などの自然の恐ろしさ、山の男たちの逞しさ。

今、ダムや工場の写真集が人気ですが、この本を読む前と後では全然違う目で、
ダムを見つめる事になると思います。



死者が出ることを前提に開始する工事
おすすめ度 ★★★★★

死者が出ることを前提に開始する工事なんてあったんだと若い人はびっくりするだろう。現在の安全が確保されている工事手順は、このような歴史の上に技術開発等が進められ出来上がっている。死者には家族もいる。それでも、天皇が戦争のために必要な工事と認めるような行為がなされれば、誰も工事を止めることができなかった時代。恐ろしい時代を通り抜けて今の時代には、また新たな問題も出てきていることをあらためて考えさせられる。安全にも守られ、衣食住にも守られ、自分で生きていこうとしない人間を製造する家族のあり方(学校教育より以前に家族のあり方が問われるべきと思う)が、今一番の課題と思う。



まさに夢のコラボです。
おすすめ度 ★★★★★

言うまでもなく最高峰 。出来は今更ながら言うまでもなく素晴らしい。
ホント満点を付けても良い出来です。


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