快く読み過ごせる佳品おすすめ度
★★★★★
六人の壮年作家が個性豊かに描いた書下ろし短編集。高校生が夏休みに気軽に読める作品ばかりである。少年少女の夏の日の淡く切ない物語で、それぞれに楽しく読み過ごせる。ここでは、直木賞作家芦原すなおの「東京シックスティーン」について述べておこう。
主人公「ぼく」は高校一年生、唯一の友人「天田」と夏休みに東京へ夏期講習に出かける。そこで一緒になった他校の男子生徒とけんかしたり、女子生徒に片思いしてみたり、田舎者丸出しの東京初体験をする。内容自体に際立った事件もないが、場面場面の比喩表現はこの作者独自のユーモアで愉快に読ませる。
「サナダムシみたいにおぞましい数列などの授業や、…なるほど唐人の寝言とはこれかと思っただけだった」
「あの夏の月世界旅行は、ぼくに驚くほどいろんなものをくれた。ある意味で、あのときからぼくはほんとに生きることを始めたような気がする。」
最後も印象深い。「あの女の子とその後二度と会うことはなかったが、それでいいのだと思う。あの子はぼくの胸の中に、永遠という観念の結晶を残していってくれたのだから。」
凄いの一言
おすすめ度 ★★★★★
わたくしめもついに買いましたよ
。ファンであれば購入価値は高いかと存じます。
すばらしいものだと感じましたので☆5評価としました。