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魚影の群れ |
緒方拳、夏目雅子、佐藤浩一という演技力ある俳優達がぶつかり合い、映画の本質を見せられるような素晴らしい作品です。
各々が演技を超え人物になりきっている様は見るものを圧倒させる力があり、心が騒ぐというか映像の中に自分が飲み込まれていくような気持ちになりました。とても満足できる逸品です。 |
高熱隧道 (新潮文庫) |
吉村昭氏の小説で感銘を受けたものの1つが「白い航跡」であった。かの小説では、明治時代の実在する医師の物語であったし、評定のあるように記述文学の話も頭にあったことから、小説の登場人物は実在するものと考えており、その通りだった。
この「高熱隧道」においても、読み進んでいったところすべてが本当のところと思い込んだのだが、それはあとがきで裏切られる。状況や心情など、細かい取材があって作り出される現実の描写とそれによって生まれる小説の様は見事。<調べた小説>として解説がされている。 他のReviewerが述べているように、この小説は黒部第三発電所の物語である。プロジェクトXや「黒部の太陽」で話題になっている黒部ダム第四発電所の物語ではない。大きな違いを述べておきたい。 1.第三発電所建設時期は、日中戦争時、太平洋戦争の直前の昭和11年〜15年である。物資が戦争にあてられる時代。御国への献身と、軍事産業の発展のため国のために発電所が必要とされた。この本では、安全に関する法律の施行よりも、高い賃金を払い仕事を優先させられる様が描かれている。命の保障もなく。 黒部ダム(第四発電所)建設は戦後の1956年。時代背景が全く異なる。 2.殉職者数が異なる。 第四発電所の建設工事では180人あまりである。 第三発電所の建設工事では300人を超えているとされている。 3.工事と自然に対する知識が異なる。 他のReviewerが述べているように、自然の驚異が描かれている。この本に記述された前例として引用されているのが、オーストリアの自然現象。村が掻き消されたらしい。そうしたことが起こる可能性すら疑えなかった第三発電所の建設工事時代。黒部ダム建設時代とは異なっているし、第三発電所の建設工事の知的産物が第四発電所の建設工事に生かされたことは確かだろう。 また、高熱隧道工事におけるダイナマイトの使用に関しても、工夫から新規の手法が生まれる様が描かれている。第四発電所建設工事の詳細は知らないが、技術的な差があり、それに伴い危険の差もあったことと思う。 プロジェクトXのものよりも印象的なドラマが作れると考えられるが、 なぜそれがされないのか・・・? 理由として: ・戦前で情報が限られている(小説はそうは思わせないが・・・) ・自然現象が凄まじ過ぎるので描写できないこと ・爆死する様や、仕事人の狂気というのが絵にならないこと があげられる。 戦時中の仕事・自然の驚異というのはこういうものだったのか知らしめられる。 読む価値の高い本。 |
羆嵐 (新潮文庫) |
とても読みやすい本です。
羆を倒す者の条件は「孤独であること」というくだりがこころに残りました。鉄砲や人数をいくら用意しても、たった一頭のクマさえやっつけることができなかったという不思議な現実が、淡々と描かれています。 難航するクマ退治。次から次へと加勢に現れる人間さまはみな、判で押したように自信たっぷりで乗り込んでくるけど、その思い上がりは木っ端微塵に撃ち砕かれます。同じパターンの繰り返しですけれど、ご覧になって退屈に思われることはないと思います。かえって、現場の情景が濃度を増してくような感じさえします。ちょっと残酷な場面がしんどいですけれど、読み応えがありますよ。 |
破獄 (新潮文庫) |
青森、秋田、網走、札幌の各刑務所の脱獄に成功した主人公「佐久間清太郎」の頭脳と体力のすごさに驚かされた。このようなことは、映画の世界だけかと思っていたが実際にあったことだとということで、更に驚かされた。本作品を読むきっかけになったのは、12月末に寒冷の網走へと旅行に行った時に、網走監獄博物館を訪れて、本の主人公「佐久間清太郎」の話を聞いて興味をそそられたからである。脱獄を繰り返す主人公「佐久間清太郎」VS看守との戦い。心理作戦など見事に描かれている。単に脱獄の手段や経緯を綴った物ではなく、時代背景を織り交ぜて監獄の施設の状態や囚人の置かれた状況も知ることができる。また、主人公「佐久間清太郎」が最後に服役した府中刑務所で出会った所長の鈴江の民主的な心が通った処遇により主人公が変わる様子は、現代の管理社会でのストレスに何らかの通じるものがあるように思う。 |
思いがけずこんな 吉村昭 を夢で見た・・・!
MySpaceで着実にファンを増やしているシンガーソングライター 吉村昭。青春時代の告白の瞬間のように、切ない恋のワンシーンを描いた今作は、夏の告白ソング決定盤。
今後の目標として「演技のレッスンをしているので、ドラマや映画に出てみたい」と話した。
、、ってそんな話を聞いたらやっぱり思い出したのがこれっすね。
『 恋愛をして分かることの一つは、時間というものは一定の速度で過ぎていかなければならぬということです。 』( 吉行淳之介 )
胸に染み入る言葉ですなあ。
吉村昭「プリズンの満月」
吉村氏の小説らしく、綿密に取材・調査をした上で淡々と書かれていて、ディテールの光景が目に浮かびます。 戦勝国の裁判による戦犯の特定と取扱いの不条理さを今は定年退職した刑務官の目から回想しています。 巣鴨プリズンの痕跡がサンシャイン裏の ...
「赤い人」 吉村昭
赤い囚衣の男たちが石狩川上流に押送されたのは明治14年のことだった。国策に沿ってかれらに課せられた死の重労働。鉄丸・鎖につながれた囚徒たちの労役...
吉村昭
もうお一方は、吉村昭さん。菊池寛賞をとった「戦艦武蔵」が有名。その作品のモチーフも「死」だった気がする。吉村さんは、膵臓癌の延命治療を拒否し、自宅療養中に「死ぬよ」と言い置いて、自分でカテーテルポートなどを抜いて「尊厳死」したといわれて ...
吉村昭「光る壁画」 (胃カメラ開発の小説)
先日、内視鏡検査を受けました。
名短篇、ここにあり 北村 薫 宮部 みゆき編
半村良「となりの宇宙人」、黒井千次「冷たい仕事」、小松左京「むかしばなし」、城山三郎「隠し芸の男」、吉村昭「少女架刑」、吉行淳之介「あしたの夕刊」、山口瞳「穴――考える人たち」、多岐川恭「網」、戸板康二「少年探偵」、松本清張「誤訳」、井上 ...
「長英逃亡上下」吉村昭
普段は歴史小説はあまり読まないのですが、お見舞いにいただいたので、手をつけてみました。 長編ということもありますが、移植前後に読んだので二ヶ月近くもかかってしまいました。 幕末の蘭学者、高野長英の話なんですが、史実に忠実で勉強にはなります ...
史実を歩く (吉村 昭)
吉村昭氏の作品は、以前数冊読んだことがあります。 テーマ選定の鋭さ、描写の緻密さ等、作品に対する一本気な姿勢が感じられて、私の好きな作家のひとりです。 本書は、いくつかの作品の執筆に関わる吉村氏なら...
吉村昭さんの初の本格評伝を読んでみる
取り上げられていた吉村作品から、全く無関係の鉄道事故を思い出してしまうのはなぜ?
暁の旅人
「激動期の波にもまれながら、信念をつらぬいて多彩に生きた医家」(吉村昭の「あとがき」)であった松本良順は、牛乳や海水浴が健康にいいとして推奨するなど、衛生啓蒙活動にも力を注いだ。東京から手軽に行ける神奈川県大磯を、海水浴のできる別荘地 ...
破獄(吉村昭)
犯罪史上他に例のない4度の脱獄をやってのけた佐久間清太郎。いったい彼はどのようにして脱獄することができたのか?彼と看守たちとの攻防を描いた作品。 どんなに頑丈な手錠をかけ警備を厳重にしても、彼は脱獄する。難攻不落と言われた網走刑務所 ...